さよならだけが人生だ

 コロナ過の中、まもなく、人事異動のシーズンです。本年度末、大人数での送別会は難しいかもしれませんね。 別れといえば、

 

     この杯を受けてくれ 

     どうぞなみなみ注がしておくれ 

     花に嵐のたとえもあるぞ 

     さよならだけが人生だ

    (「勧酒」于武陵・井伏鱒二訳)

 

という詩があります。元は漢詩ですが井伏鱒二が見事な日本語訳に仕上げてくれました(原文はカタカナ)。

 人生にはどこかで悲しい別れがあり、どんなに美しく咲いている花でも突然の嵐によってその全てを奪われることがある、そういうはかなさこそが人生なのだから、それは受け入れて、前を向いて歩いていこうよ、というようなニュアンスを感じることができます。

 寺山修司はこの言葉によって幾度も青春のクライシスを乗り越えることができたといいます。別れに限らず、不遇にあるときも、人生には、そういう一面もあるのだから、そういった心の準備をしておけば、前を向いて生きていけると、そっと背中を押してくれる詩でもありますね。