読書の秋に

    読書の秋です。ところで,日本人はどのくらい本を読んでいるのでしょうか。文化庁が実施した「国語に関する世論調査」(平成30年度)によれば,「1か月に大体何冊くらい本を読むか」という設問に対し,47.3%の方が,1か月に1冊も本を読まないと回答しています。また,これは,平成20年度,平成25年度の調査と比較しても,あまり変化は見られないようです。この調査を見る限り,半数近い方が,1か月に1冊も本を読まないというのが現実であるようです。

 確かに,現代は,インターネットの発達により,より簡単に「情報」に接することができるようになりました。本を読まなくても,それなりの「情報」は入手できます。インターネットでは,検索機能を利用することにより,必要とするときに,必要とする「情報」が,手に入れられるようになったと思います。また、紙の本には、著者だけではなく、出版社、編集者、その他本を作成することに携わるすべての方の意向が反映され、一つのテーマについて体系的であるといえます。このように、インターネットにはインターネットの良さが、紙の本には紙の本の良さがあると思います。これからの時代は,インターネットと紙の本の利点をうまく組み合わせ,いわば,「いいとこ取り」をして,活用していきたいものです。

 いい仕事をしていくために,また,よりよく生きるために,何が必要でしょうか。その一つとして「本質を見抜く力」(=洞察力)が挙げられると思います。この「本質を見抜く力」を養うために,読書は格好の手段になると思います。著者の主張に対して,ここは共感できる,ここは違うのではないか,私ならこう考える,その理由はこうだと,自分で「本質を見抜く」思考を養成する訓練にもなると考えられるからです。

 このように,読後,いわばアウトプットとして,自分なりに考え,気づきを残していくようにすれば,本の内容が長く記憶され,単なる知識を超えた「本質を見抜く力」を涵養でき,読書が重要な学びの手段になっていくといえるのではないでしょうか。